報告 シンポジウム「ソーシャル・インパクト・ボンドと新しいまちづくりの可能性」

基調講演 小林立明氏
2017年3月25日14時より、市民活動プラザ星園大会議室において、シンポジウム「ソーシャル・インパクト・ボンドと新しいまちづくり」を参加者約40人で開催しました。小林立明氏(ソーシャル・ファイナンス研究会代表)の基調講演「海外におけるSIBの発展と日本版SIBの可能性」においては、SIBの基礎知識として「社会的インパクト債(SIB)とは人々の生活を測定可能な形で改善する効果的な社会事業に対し、資源投入を促進する官民連携枠組みである」ということを確認したのち、SIBの仕組みと海外および日本の事例、そして北海道での導入において検討すべき論点として、「取り組むべき社会課題、財源、担い手、多様な資金調達手段の中でSIBに固執するべきか否か」を提示していただきました。
パネルディスカッション
パネルディスカッションでは、小林立明氏(ソーシャル・ファイナンス研究会代表)、田口晃氏(NPO推進北海道会議代表理事)、河西邦人氏(札幌学院大学経営学部教授)、小野晋氏(日本政策金融公庫)をパネリストに、NPO推進北海道会議の佐藤隆がコーディネーターを務め、基調講演を受ける形で議論を行いました。
SIBを取り巻く環境については、「投資型クラウドファンディングの高い伸び率は、SIBを含めた社会的投資の広がりを示唆する(河西氏)」「ソーシャルセクターに関して言えば、ものすごい金額が流入しており資金的には心配していない。むしろNPOを含めたソーシャルセクターが、社会的インパクトを生むビジネスモデルを提示してきちんと受け止めることができるか(小林氏)」という意見が述べられました。またSIBにおいて重要な要素である成果指標については、「PFIでも行政が仕様を決めているが、SIBの事例では、事業者側や市民投資家側が意見を言える。社会の中のガバナンスにおいて、市民やNPOがどのような社会的インパクトを望むのか、それを行政側に言える機会となるかもしれない(河西氏)」「社会的成果の指標化は、やり方次第では、自画自賛にとどまる。第3者をまじえた成果指標づくりが重要だ(田口氏)」さらに「指標は数値だけにとどまるのではなく、対象者のQOLや幸福感を指標化する取り組みもある(小林氏)「資金の出し手としての金融機関の立場からすると、軸は評価指標ということになるが、事業体の経営的体力も見ることになる(小野氏)」などの意見があり社会のガバナンスが一つのキーワードとなりました。
会場の行政職員からは「検討する意義は大いにあると思うが、評価の厳密さや成果重視の姿勢が事業内容に及ぼす影響など細かいところが気になる」地方議会議員からは「SIBは議会で2回ほど取り上げられた。札幌市は政令市の中で2番目に生活保護が多い。分野については検討する必要があるが、パイロット的に試行することができないかと思う」という感想が寄せられました。NPOはSIBの流れに対してどうするべきかという問いかけに対して、NPO推進会議の佐藤事務局長は「社会のガバナンスに関わる新しい流れであり、積極的にかかわっていくべき」と述べられ、小林氏は「金銭的にだけ考えると、休眠預金活用と比べてもSIBはそれほど魅力とはいえない。お金が欲しいだけなら他の手段を考えたほうがよい。しかし、行政自身が行政コスト削減への意思・イデオロギーを背景として成果連動型の導入を望んでいる。その際にNPO、市民社会はルールづくりにおいて主張すべきことを主張しないとならない。そのような意味では、SIBに関わっていくことには意義があると思う」と述べられました。
今後の展望として、パネリスト各氏から「融資にこだわるつもりはないので、NPO等のみなさんと社会課題への取り組みをやっていきたい(小野氏)」「SIBが浸透すれば、手弁当でやっていたことが、行政からお金をもらえる可能性がある。一方で成果を出さなければならないという責任も生じるが、チャレンジしてほしい(河西氏)」「北海道でNPOを広げようとしたころ、市民社会の発展を予想していたが、思った通りだったと思う。今は社会のつながりかたが複雑化しているなと思う。行政と市民社会は協力かつ競合関係、時にはしんどいこともあるが乗り切ってほしい(田口氏)」「ソーシャルファイナンスは最終的にはローカルファイナンスなのではないか。ローカルの中で税金、寄付であったり、資金を循環させる仕組みをつくる。グローバル金融機関がやっているものだけでなく、北海道のような地域でローカルファイナンスの循環モデルができればと思う(小林氏)」という言葉をいただきました。

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